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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1476号 判決 1949年11月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人市原庄八上告趣意第一点について。

原判決は、その事実理由の箇所で被告人が少年であることを判示せず、また、その擬律の箇所で少年法の規定を示さなかったことは、所論のとおりであって、一般の取扱例に反し粗笨であることを免れない。しかし、昭和二三年一二月一〇日言渡された原判決書によれば、被告人の氏名表示の箇所で特に昭和六年六月五日生と記載し、その主文の箇所で被告人を懲役八月以上一年以下に処する旨不定期刑の言渡をしているから、原判決は、その言渡の際被告人を一八才に満たない少年であると認め、旧少年法第八條第一項に從い処断したものであること明白である。そして有罪判決に示すべき旧刑訴三六〇條にいわゆる「罪となるべき事実」とは具体的犯罪構成事実を指し、また同條にいわゆる「法令の適用」とはかかる具体的犯罪構成事実に適用すべき実体法規をいうものである。從って、少年法にいわゆる少年たることは、特にこれを判決書の事実理由の箇所で明示しなくとも罪となるべき事実記載を欠くものとはいえないし、また、犯罪事実に適用すべき実体法規以外の法規は、現実にこれを適用したことが認められる限り、特にこれを法律適用の箇所に示さなくとも法令の適用をしなかったものともいえない。されば、原判決には所論の違法があるものとはいえないから、所論は結局採ることができない。

同第二点について、

しかし、少年法にいわゆる少年であるか否かは、原判決言渡の時における年令に從うべきものであることは、既に屡々当裁判所の判例とするところである。そして、論旨第一点について述べたとおり被告人は昭和六年六月五日生であり、原判決は昭和二三年一二月一〇日言渡されたものであるから、原判決がその言渡の際被告人を一八才に満たない少年であると認め被告人に対し旧少年法第八條による不定期刑の言渡をしたのは正当であって原判決には所論の違法は存しない。本論旨も採ることができない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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